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フランスガム真梅雨劇場〜雨垂れ交響曲〜
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 雨はもう幾日も降り続いていました。
ひとりの女が今日も この線路ぞいの土手へやってきました。
女は、紫色のレインコートを羽織り、雨傘をさしているにもかかわらず、
その髪や頬はびっしょりとぬれておりました。
 女の名前はアジサキ・サイコといいました。アジサキ・サイコは、
毎日正午を知らせるサイレンが鳴るとどこからともなく現れ、
夕方6時のチャイムが流れるまで、ずっとこの土手に立っているのです。
何をする訳でもなく、ただ空を見つめるようにして佇むその姿には、
どこか寂しげで得体の知れぬ憂いが漂うのでした。

 アジサキ・サイコには、夫と2人の子供がおりました。
夫は、カタツムリ社という運送会社の長距離トラックの運転手で、
勤務の折には家を何日も留守にしました。
アジサキ・サイコは2人の子供と一緒に、小さなアパート「雨垂れ荘」で
しずかに夫の帰りを待っているのでした。
 長距離トラック運転手の夫と結婚する前、アジサキ・サイコには、
将来を誓いあった婚約者がおりました。
婚約者の名前は、アメカワ・アフルといいました。
とても気性の荒い男で、すぐにアジサキ・サイコを大きな声でどなりつけたり、
ぶったりしました。アジサキ・サイコは彼のそんなところに悩まされながらも、
本当は彼の優しいことを知っていたので、耐え忍びました。
なにより彼の描く7色の絵画はほんとうに優美であり、
この世のすべての罪や悪をつつみこんでくれるような気がしたのです。
(人々はその絵を虹と呼びました。)

 しかし、アジサキ・サイコの両親は、
アメカワ・アフルとの結婚を許しませんでした。
親戚が経営するカタツムリ社の社員である、今の夫との縁談をすすめ、
ふたりを結婚させてしまいました。母親は満面の笑みでこう言いました。
「平穏を誇る天下のカタツムリ社の社員であれば安心ね!」
 アジサキ・サイコは、夫を愛していないわけではありませんでした。
穏やかな夫と穏やかな子供との穏やかな生活は、アジサキ・サイコにとっては
幸福とも呼べるものでした。しかし、何かが足りないのです。

 そして雨の降る音がすると、アジサキ・サイコはたまらずに外へ出てゆくのです。
昔よく、アメカワ・アフルと雨の降りしきる中、手をつないで土手を走り抜けたことを思い出しながら。

 線路ぞいの土手では今日も紫陽花がその美しい色を雨に滲ませております。


彼女の頬がぬれているのは、雨のせいだけではないのです。
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フランスガム出版『フランスガム花詩集』2005 より抜粋


(おまけ)雨垂れ交響曲 第二番「悲愁」
        軒下のためのパート譜 
     ((clickするとちょっと見えるかも))

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by francegum | 2009-06-21 22:35 | おはな詩
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