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バレエ教室の帰り道 キンモク・セイラは
今日クラスの子が言っていた噂話について考えていました。 その子のいとこのお姉さんの友達の友達のペンフレンドの通っている塾の先生の姪っ子の知り合いが 愛に押し潰されて亡くなったという噂話でした。 「愛、ってそんなに重いものなのかしら...。」 夕飯のミート・ボールを食べながら キンモク・セイラは さっきの噂話を思い出しました。 「ねえ、ママ。愛、って重いものなの?」 ママは笑いながら答えました。 「そうね。愛、には重さがないのよ。 ほら、こんな小さなミート・ボールにだってたっぷり入っているのよ。」 「ふうん。」 キンモク・セイラはミート・ボールをぱくりと口に放り込みました。 なぜだか 口の中にずっしりとした重みを感じました。 屋根裏の自分のベッドの上で 「ガールズ・ダンス」の雑誌を眺めながら キンモク・セイラは 愛 について考えていました。 ねこのアム−ルがやってきて キンモク・セイラの膝にのりました。 「やっぱり愛には重さなんてないわ。 だってあたしはアムールをこんなに好きなのに アムールはちっとも重くなんてないもの。」 キンモク・セイラは アムールを持ち上げると 自分のベッドに入れてやり 眠りにつきました。 次の日曜は、バレエ教室の発表会でした。 キンモク・セイラには花の妖精3 の役が与えられておりました。 キンモク・セイラは朝から胸がドキドキして 朝食のオムレツも半分しか食べられませんでした。 冷凍イワシのようにカチコチになったキンモク・セイラが出かける前に ママは橙色の香水の瓶を持って来て 花の妖精3の衣装に1ふき 2ふき しました。 「愛のおまじないよ。」 舞台の幕があがり キンモク・セイラの出番がやってきました。 舞台のまん中で1回ターンをすれば 彼女の役目は終わりでした。 ドキドキしながら舞台のまん中まで出ると 彼女の頭は一瞬真っ白になりました。 その時 衣装のすそからふわりと甘い香りが漂い キンモク・セイラはその優しさにつつまれるようにくるりとターンをしました。 甘い香りが柔らかい輪を描くように広がりました。 キンモク・セイラはもう一度ターンをしました。 もう一度! もう一度! ターン! ターン! ターン! 舞台の上は、甘い香りでいっぱいになりました。 とうとう舞台の端までまわり終えると 彼女はバタリと倒れました。 目をまわしながら彼女は 昨日の 愛 について考えていました。 __やっぱり愛には重さなんてないんだわ。 だってあたしはこんなに軽々とターンができたのだもの! 外では金木犀の花が あふれんばかりの甘い香りをふりまいておりました。 花びらは まるではりきりすぎてつかれた小さなバレリーナたちのように あちらこちらに散らばっておりました。 『フランスガム花詩集 2005』より抜粋
by francegum
| 2008-10-09 01:23
| おはな詩
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